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痛みも軽く…「カプセル内視鏡」が大腸がん検診を変える

大腸がんは、予測がん罹患数第1位、死亡数第2位のがんだ。このがんの検査である「大腸カプセル内視鏡」が保険適用になって2年が過ぎた。しかし、いまだ認知度は低い。国立がん研究センター中央病院内視鏡科・角川康夫医長に聞いた。

■痛くない、恥ずかしくない  

大腸がんは早期では自覚症状に乏しいので、最悪の事態を避けるには大腸がん検診を受けることが不可欠だ。最も精度が高いのは、肛門から内視鏡を入れる大腸内視鏡での検査になる。しかし、「痛い」「恥ずかしい」といった理由から受けない人が多い。

「健診などの便潜血反応で陽性が出ても、精密検査としての大腸内視鏡に進むのは60%未満です」  

この状況を変えるかもしれないと期待されているのが、カプセル型の内視鏡「大腸カプセル内視鏡」だ。大きさは約3×1センチで、大きめのサプリメント程度。これをのみ込んで画像検査を行う。丸みを帯びているので思っている以上にのみ込みやすい。  

大腸カプセル内視鏡は「頭」と「お尻」に超小型カメラが搭載されている。

「ヒダの多い大腸はヒダ裏が死角となることがあるのですが、2つのカメラ搭載なので死角も撮影できます。撮影した写真はレコーダーに送信され、専用コンピューターで解析されます。感度は90%前後で、従来の大腸内視鏡の精度にかなり近づいてきました」  

検査の流れは、@朝、食事はせず、腸をきれいにするため下剤を飲む。A腸がきれいになったら大腸カプセル内視鏡をのむ。B大腸カプセル内視鏡を肛門に押し出すため下剤を飲む。C肛門からカプセルが出るのを待つ。  

国立がん研究センターではAだけが病院で、ほかは自宅で行う。1日がかりの検査になる。食事は、検査前日は普通に食べられる。検査当日の朝から大腸カプセル内視鏡が体外に出るまでは、水は飲めるが食事はできない。検査時間は個人差があるものの、平均すると検査当日の夜には食事ができる。

■下剤の進化で負担軽減  

この2年で変わったのは、まず下剤の量だ。

「当初は合計3.8リットルを飲まなければいけませんでした。欧米の合計6リットルよりずいぶん少ないとはいえ、患者さんの負担が大きかった。今は少量で腸をきれいにする下剤が登場し、3リットル以下も可能という報告も出ています」  

次に、国立がん研究センターでの研究段階だが、「寝ている間に検査が済む方法」も試みられている。実は取材を行った当日は、角川医長自身がまさにそれを試す日だった。検査の流れは前述の通り。しかし、行う時間帯が違う。

「私がいま試みているのは、夕方6時くらいに下剤を飲み、腸がきれいになったら夜8〜9時くらいに大腸カプセル内視鏡をのむ。そのまま自宅に帰って寝る。朝起きたら追加の下剤を飲み、大腸カプセル内視鏡が肛門から排出されたら検査は終了という方法です。それ以降は普段の生活通り、朝食を食べて仕事に向かうことができます」  

これが実現化されれば、サラリーマンも会社を休むことなく検査を受けられる。  

今後の課題は、どこまで保険適用になるか。 「現在は『大腸内視鏡検査を受けたが、内視鏡が大腸の奥まで入らなかった人』、あるいは『内視鏡が大腸の奥まで入らないだろうと考えられる人』が保険適用です。『大腸内視鏡を受けたくないから、大腸カプセル内視鏡を』というような場合は自費になります」  

自費では10万〜11万円程度かかる。また、大腸カプセル内視鏡では悪性ポリープが見つかっても切除はできず、改めて大腸内視鏡を受けなくてはならない。

「そうはいっても、大腸カプセル内視鏡がもっと普及すれば、大腸がんの死亡数は減少していくことが期待できます」  

40歳を越えたら、少なくとも数年に1回は大腸がんの有無を調べた方がいい。


2016/1/26 日刊現代







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